■ 柏病院TOPページ

非小細胞肺癌の治療



本ページでは非小細胞肺癌治療の基本的概念について解説します。
(東京慈恵会医科大学 柏病院 呼吸器外科)

注)
1.実際の治療に関しては主治医と相談して行って下さい。
2.本データは薬剤添付文書、肺癌ガイドライン、日本肺癌学会ホームページ等を参考にしています。



内容一覧


1. 非小細胞肺癌とは?
3. PS(患者の全身状態)とは?
5. 臨床病期3B期の非小細胞肺癌の治療
7. EGFRとALKとは?
9. 臨床病期4期の治療
11. 抗癌剤の組み合わせ
2. 臨床病期1期から3A期の非小細胞肺癌の治療
4. 臨床病期1期から3A期の非小細胞肺癌の手術後の補助化学療法
6. 臨床病期4期の非小細胞肺癌の治療
8. 困難な略語
10. オプジーボ(ニボルマブ)
12. 抗癌剤の解説

1. 非小細胞肺癌とは?


  • ・非小細胞肺癌とは、小細胞肺癌ではない肺癌の事です。
  • ・非小細胞肺癌は更に、扁平上皮癌と非扁平上皮癌に分かれます。
  • ・非扁平上皮癌とは、扁平上皮癌でない非小細胞肺癌を指します。
  • ・非扁平上皮癌の多くは、腺癌です。
  • ・難しい用語がたくさん出てきますが、この頁内に解説を入れてありますので、良く見てもらえば理解し易いと思います。
    この難しい用語にはPS、抗がん剤の名称などがあります。
  • ・肺癌の病期に関しては別のページを参照して下さい。
    http://www.jikei.ac.jp/hospital/kashiwa/sinryo/40_02w1.html#case19


2. 臨床病期1期から3A期の非小細胞肺癌の治療


  • ・最初に、手術を受ける体力があるかどうか決めなくてはなりません。そのためには、呼吸機能評価(スパイロメトリー)、循環器機能評価(安静時心電図)、血液検査、年齢などを評価し手術可能かどうかを評価します。
  • ・この時、患者さんの一般状態も重要です。これを医師はピーエス(PS)と呼びます。
  • ・肺癌の手術は、癌のある肺葉切除およびリンパ節郭清が基本です。肺癌手術の多くは近年、鏡視下手術という、開胸をしない、低侵襲手術で行われています。手術の詳細については別のページを参照して下さい。
    http://www.jikei.ac.jp/hospital/kashiwa/sinryo/40_02w1.html#case19


表1.臨床病期1期から3A期の非小細胞肺癌の基本的治療方針

臨床病期 手術 手術による根治 治療方針

1期から2期

可能 可能 手術(肺葉切除以上の切除)
不能 放射線療法
3A期 可能 可能 手術
不能 化学放射線療法
放射線療法
不能

3. PS(患者の全身状態)とは?


PS(ピーエス)とは患者の全身状態の低下を示す数値です。


表2.PS

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく発病前と同等に振る舞える。
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできる。例えば軽い家事、事務など
歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助がいることもある。軽労働はできないが、日中の50%以上は起居している。
身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。
身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。

ECOGによるPS(Performance Status:患者の全身状態)
※ECOG:Eastern Cooperative Oncology Group:米国東海岸癌臨床試験グループ


4. 臨床病期1期から3A期の非小細胞肺癌の手術後の補助化学療法


表3.臨床病期1期から3A期の非小細胞肺癌の手術後の補助化学療法

  解説 術後補助化学療法
臨床病期1A期 癌≦2cm なし
臨床病期1B期 2cm<癌≦3cm ユーエフティE(UFTE) 内服2年間
臨床病期2A期
臨床病期2B期
臨床病期3A期
  シスプラチン(CDDP)と他剤の併用化学療法
臨床病期3A期 N2(縦隔リンパ節転移) シスプラチン(CDDP)と他剤の併用化学療法

肺癌術後化学療法の例周術期化学療法の例
(1)ユーエフティE(UFTE)療法
ユーエフティE 250mg/m2毎日内服,1〜2年間
(2)シスプラチン(CDDP)併用療法
シスプラチン(CDDP) 80mg/m2 第1日
ビノレルビン(VNR) 25mg/m2 第1,8日目
3週毎,4コース。


5.臨床病期3B期の非小細胞肺癌の治療


  • ・臨床病期3B期の非小細胞肺癌の治療として手術は行いません。これは、手術による利益が期待できないからです。病変は進行しており、手術は危険が伴い、手術による治癒も期待できないからです。
  • ・臨床病期3B期の非小細胞肺癌の治療として化学療法と放射線療法の併用を行います。
  • ・治療方針決定は複雑です。

化学療法と放射線療法の同時併用の例
(1) CP療法
胸部放射線治療 60Gy/30回(6週)、1日目から。
カルボプラチン(CBDCA)(AUC=2)、第1、8、15、22、29、36日目。
パクリタキセル(PTX) 40mg/m2、第1、8、15、22、29、36日目。
その後
カルボプラチン(CBDCA)(AUC=5)、1日目、2コース。
パクリタキセル(PTX) 200mg/m2、1日目、2コース。
(2) CD療法
放射線療法+シスプラチン(CDDP)+ドセタキセル(DTX)
(3) カルボプラチン(CBDCA)療法
放射線療法+カルボプラチン(CBDCA)


6.臨床病期4期の非小細胞肺癌の治療


  • 1. 臨床病期4期の非小細胞肺癌の治療は化学療法です。
  • 2. 非小細胞肺癌は扁平上皮癌と非扁平上皮癌に分類されます。
  • 3. 非扁平上皮癌は腺癌、大細胞癌があります。
  • 4. 臨床病期4期の非扁平上皮癌に対しては、EGFR遺伝子変異を調べます。陰性の時は、次にALK遺伝子転座の検査を行います。(診断が生検や細胞診などの微量の検体の場合においては、腺癌が含まれない組織でもEGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転座の検索を考慮する)


表4. 臨床病期4期の非小細胞肺癌の治療は次の4型に大別されます。

臨床病期4期の非小細胞肺癌

 

非扁平上皮癌 EGFR遺伝子変異陽性
ALK遺伝子転座陽性
双方陰性
扁平上皮癌

7.EGFRとALKとは?


(1)EGFR:上皮増殖因子受容体
EGFRとはがん細胞が増殖するための信号を受け取るがん細胞表面のタンパク質です。がん細胞が増殖するのに必要な信号を細胞内に伝える役割を担っています。
非小細胞肺がんの細胞表面にはこのEGFRと呼ばれるタンパク質がたくさん発現しており、このEGFRを構成している遺伝子の一部(チロシンキナーゼ(tyrosine kinase:チロシンリン酸化酵素)部位)に変異が認められる患者さんがいます。このような変異がある患者さんは欧米人よりも日本人などのアジア系、男性よりも女性、たばこを吸わない人、非小細胞肺がんのなかでも腺がんの患者さんに多く認められます。このような患者さんにチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を使用するとがん細胞の増殖が抑えられます。

(2)ALK:未分化リンパ腫キナーゼ
ALK 融合遺伝子とは、ALK 遺伝子とほかの遺伝子が融合した遺伝子です。ALK融合遺伝子があると、この遺伝子からできるタンパク質(ALK融合タンパク)の作用により、がん細胞が増殖します。ALK融合遺伝子は、非小細胞肺がんの腺がん、たばこを吸わない患者さん、比較的年齢の若い患者さんに認められやすいです。ALK融合タンパクを阻害する薬剤を使用するとがん細胞の増殖が抑えられます。


8.困難な略語


表5.略語表

EGFR

上皮増殖因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor)

EGFR遺伝子は、血管新生誘導、細胞増殖促進、アポトーシス阻害などの作用に深く関与しています。
TKI チロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor)
EGFR-TKI

上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤

ゲフィチニブ(Gefitinib)・エルロチニブ(Erlotinib)・アファチニブ(Afatinib)の総称
ALK 未分化リンパ腫キナーゼ(anaplastic lymphoma kinase)
プラチナ製剤 シスプラチン(CDDP)とカルボプラチン(CBDCA)の総称
CBDCA カルボプラチン
CDDP シスプラチン
CPT-11 塩酸イリノテカン
DTX ドセタキセル
VNR ビノレルビン
GEM ゲムシタビン
nab-PTX ナブパクリタキセル
PEM ペメトレキセド
PTX パクリタキセル
PAC パクリタキセル
VBL ビンブラスチン
VDS ビンデシン
ETP エトポシド
MMC マイトマイシンC
TS-1 ティーエスワン
S-1 エスワン


9.臨床病期4期の治療


表6.臨床病期4期の治療は次の4つに分けて考えます。

  組織 EGFR遺伝子変異 ALK遺伝子転座
1) 非扁平上皮癌 陽性 陰性
2) 陰性 陽性
3) 陰性 陰性
4) 扁平上皮癌    



表6.1)非扁平上皮癌およびEGFR遺伝子変異陽性

PS=0-1 75歳未満 EGFR-TKI単剤
プラチナ製剤と他剤の併用±ベバシズマブ
プラチナ製剤と他剤の併用±維持療法
75歳以上 ゲフィチニブ(Gefitinib)の単剤またはエルロチニブ(Erlotinib)の単剤
非プラチナ製剤の単剤
カルボプラチン(CBDCA)と他剤の併用
PS=2 ゲフィチニブ(Gefitinib)の単剤またはエルロチニブ(Erlotinib)の単剤
非プラチナ製剤の単剤
プラチナ製剤と他剤の併用
PS=3-4 ゲフィチニブ(Gefitinib)の単剤



表6.2)非扁平上皮癌およびALK遺伝子転座陽性

PS=0-1 75歳未満 クリゾチニブ(Crizotinib)の単剤
プラチナ製剤と他剤の併用±ベバシズマブ
プラチナ製剤と他剤の併用±維持療法
アレクチニブ(Alectinib)の単剤
75歳以上 クリゾチニブ(Crizotinib)の単剤
非プラチナ製剤の単剤
カルボプラチン(CBDCA)と他剤の併用
アレクチニブの単剤
PS=2 クリゾチニブ(Crizotinib)単剤
非プラチナ製剤の単剤
プラチナ製剤と他剤の併用
アレクチニブ(Alectinib)の単剤
PS=3-4 化学療法は勧められない



表6.3)非扁平上皮癌およびEGFR遺伝子変異陰性(又は不明)およびALK遺伝子転座陰性(又は不明)

PS=0-1 75歳未満 プラチナ製剤と他剤の併用±ベバシズマブ
プラチナ製剤と他剤の併用±維持療法
75歳以上 非プラチナ製剤の単剤
カルボプラチン(CBDCA)と他剤の併用
PS=2 非プラチナ製剤の単剤
プラチナ製剤と他剤の併用
PS=3-4 化学療法は勧められない



表6.4)扁平上皮癌
(EGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座の検索は必須ではない)

PS=0-1 75歳未満 プラチナ製剤と他剤の併用
75歳以上 非プラチナ製剤の単剤
カルボプラチン(CBDCA)と他剤の併用
PS=2 非プラチナ製剤の単剤
プラチナ製剤と他剤の併用
PS=3-4 化学療法は勧められない

解説)プラチナ製剤 とはシスプラチン(CDDP)とカルボプラチン(CBDCA)の総称


10.オプジーボ(ニボルマブ)


非小細胞肺癌に対するオプジーボ(ニボルマブ)について


承認:
本剤は、2014年7月に「根治切除不能な悪性黒色腫」の効能・効果にて製造販売承認され、2015年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能・効果が追加承認されました。


副作用:
本薬剤は免疫の抑制を解いて働く薬剤であり、効果が望まれる反面、自らの免疫が自分を攻撃する様々な重篤な自己免疫疾患を引き起すことが分かってきました。


オプジーボ(ニボルマブ)の作用機序:
T細胞は、がん免疫に対する免疫チェックポイント(検問所)のために効果を発揮できず、がんは成長を続けています。このがん免疫を弱める免疫チェックポイントの阻害を目標とする抗体薬(免疫チェックポイント阻害薬)を使用したがん免疫療法が始まりました。


がん免疫の妨害経路の一つに「PD-1/PD-L1経路」があります。
PD-L1(programmed cell death-1 ligand-1:PD-1リガンド)とは、がん細胞から発現している物質。PD-1(programmed cell death-1)とは、白血球のT細胞にあり、PD-L1(受容体)と結合します。
PD-L1がPD-1と結合すると、がん免疫逃避機構が働く。つまり、がん細胞に対する免疫が効果を失ってしまう。一方、PD-L1とPD-1が結合しなければ、がん免疫が働く。
したがって、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体は、二つの物質の結合を阻止し、がん免疫が働くようにする薬である。


オプジーボ(一般名:ニボルマブ(遺伝子組換え))は、ヒトPD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体です。オプジーボは、PD-1とPD-L1との結合を阻害することで、がん細胞により不応答となっていた抗原特異的T細胞を回復・活性化させ、抗がん効果を示します。


11.抗癌剤の組み合わせ


11−1)4期非小細胞肺癌の第1回目化学療法

表7.(1)シスプラチン(CDDP)

以下を4―6コース
シスプラチン(CDDP) 75mg/m2、第1日目。
ペメトレキセド(PEM) 500mg/m2、第1日目。
その後、維持療法
ペメトレキセド(PEM) 500mg/m2、第1日目。
 
ペメトレキセド(PEM)投与時は:
1.葉酸0.5mg連日経口投与、7日以上前から22日後まで。
2.ビタミンB12、1mg筋肉内注射、7日以上前から22日後まで、9週ごと。
3.シスプラチン(CDDP)との併用が原則、本剤投与後30分後に75mg/m2。
3週間毎
シスプラチン(CDDP) 80mg/m2、第1日目。
ドセタキセル(DTX) 60mg/m2 、第1日目。
3週間毎
シスプラチン(CDDP) 80mg/m2、第1日目。
ゲムシタビン(GEM) 1000mg/m2、第1、8日目。
3週間毎
シスプラチン(CDDP) 80mg/m2、第1日目。
ビノレルビン(VNR) 25mg/m2、第1、8日目。
3週間毎
シスプラチン(CDDP) 80mg/m2、第1日目。
イリノテカン(CPT-11) 60mg/m2、第1、8、15日目。
4週間毎
シスプラチン(CDDP) 60mg/m2、第8日目。
エスワン(S-1) 40mg/m2, 1日2回, day1-21。
4−5週間毎

上記を4−6コース以内で繰り返す。
維持療法を行う場合はシスプラチン(CDDP)を4コースで終了し、単剤化学療法に移行する。


表7.(2)カルボプラチン(CBDCA)

カルボプラチン(CBDCA)(AUC=6)、第1日目。
パクリタキセル(PTX) 200mg/m2、第1日目。

パクリタキセル(PTX)投与時:
1.20分前までにデキサメタゾン(デカドロン)20mg静脈内注射。
2.30分前までにジフェンヒドラミン(レスタミン)50mg経口投与。
3.30分前までにラニチジン(ザンタック)50mg
またはファモチジン(ガスター)20mg静脈内投与。
3週間毎
カルボプラチン(CBDCA) (AUC=5)、第1日目。
ゲムシタビン(GEM) 1000mg/m2、第1、8日目。
3週間毎
カルボプラチン(CBDCA) (AUC=5)、第1日目。
エスワン(S-1) 40mg/m2、 1日2回、第1-14日目。
3週間毎
カルボプラチン(CBDCA)(AUC=6)、第1日目。
ナブパクリタキセル 100mg/m2、第1、8、15日目。
3週間毎

上記を4−6コース以内で繰り返す。
維持療法を行う場合はシスプラチン(CDDP)を4コースで終了し、単剤化学療法に移行する。


表7.(3)ベバシズマブ

カルボプラチン(CBDCA)(AUC=6)、第1日目。
パクリタキセル(PTX)200mg/m2、第1日目。
ベバシズマブ 15mg/kg、第1日目。

パクリタキセル(PTX)投与時:
1.20分前までにデキサメタゾン(デカドロン)20mg静脈内注射。
2.30分前までにジフェンヒドラミン(レスタミン)50mg経口投与。
3.30分前までにラニチジン(ザンタック)50mg
またはファモチジン(ガスター)20mg静脈内投与。
3週間毎

増悪しなければ上記を6コース以内で繰り返す。
ベバシズマブについてはカルボプラチン(CBDCA)療法の終了後、病勢増悪もしくは毒性中止まで単剤投与を継続する。


表7.(4)単剤

ドセタキセル(DTX) 60mg/m2、第1日目。 3週間毎
ゲムシタビン(GEM) 1000mg/m2、第1、8、15日目。 3週間毎
ビノレルビン(VNR) 25mg/m2、第1、8日目。 3週間毎

表7.(5)内服

ゲフィチニブ(Gefitinib) 250mg/日 1錠 1日1回
エルロチニブ(Erlotinib) 150mg/日 1錠 1日1回
アファチニブ(Afatinib) 40mg/日 1錠 1日1回
クリゾチニブ(Crizotinib) 500mg/日 1回250mg 1日2回
アレクチニブ(Alectinib) 600mg/日  1日2回

11−2)4期非小細胞肺癌の第2回目以降の化学療法

表8.(1)単剤

ドセタキセル(DTX) 60mg/m2、day1

3週間毎
ペメトレキセド(PEM) 500mg/m2、day1

ペメトレキセド(PEM)投与時は:
1.葉酸0.5mg連日経口投与、7日以上前から22日後まで。
2.ビタミンB12、1mg筋肉内注射、7日以上前から22日後まで、9週ごと。
3.シスプラチン(CDDP)との併用が原則、本剤投与後30分後に75mg/m2。
3週間毎

(2)内服

参照.表7.(5)内服


12.抗癌剤の解説



表9.(1)分子標的治療薬

薬剤名 商品名 適応/用法 特徴 禁忌/警告
ゲフィチニブ
Gefitinib
イレッサ®
Iressa®
(アストラゼネカ)
EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌
 
1日1回250mg経口投与。

 

上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ選択的阻害剤
特にEGFR変異陽性非小細胞肺癌に有効
警告:
1.説明と同意
2.急性肺障害、間質性肺炎による死亡例。投与開始後4週間は入院またはそれに準ずる管理下。
3.特発性肺線維症等合併者は特に注意。
4.全身状態が悪いと死亡率上昇。
5.医師、医療機関。

 
禁忌:本剤に過敏症。
原則禁忌:妊娠。
エルロチニブ
Erlotinib
タルセバ®
Tarceba®
(中外)
切除不能な再発・進行性で癌化学療法後に憎悪した非小細胞肺癌。
EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な再発・進行性で、がん化学療法未治療の非小細胞肺癌。
 
1日1回150mg経口投与、食事の1時間前または2時間以降。
上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ選択的阻害剤:内服
特にEGFR変異陽性非小細胞肺癌に有効
警告:
1. 医療施設、医師、説明、同意。
2. 間質性肺炎疾患で死亡。治療初期は入院(又は準ずる管理下)し、十分観察。

 
禁忌:本剤過敏症。

アファチニブ

Afatinib
ジオトリフ®
Giotrif®
EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌。
 
1日1回40mgを空腹時に投与。
上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ選択的阻害剤
特にEGFR変異陽性非小細胞肺癌に有効
警告:
1. 医療機関、医師、説明、同意。
2. 急性肺障害、間質性肺炎による死亡例。投与初期は入院またはそれに準ずる管理下。

 
禁忌:本剤に過敏症。
ベバシズマブBevacizumab アバスチン®
Avastin®
(中外)
扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
 
1回15mg/kgを点滴,間隔3週。
抗VEGFヒト化モノクローナル抗体 警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
2.消化管穿孔による死亡。
3.創傷治癒遅延。手術は28日以降。
4.腫瘍関連出血。脳出血。
5.肺出血による死亡。
6.脳血管発作。心筋梗塞等による死亡。
7.高血圧脳症等による死亡。
8.可逆性後白質脳症症候群。

 
禁忌:本剤過敏症。
喀血(2.5ml以上の鮮血の喀出)の既往のある患者の死亡。

クリゾチニブ

Crizotinib
ザーコリ®
Xalkori®
(ファイザー)
ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺癌。
 
1回250mg,1日2回経口投与。
ALK阻害剤。 警告:
1. 医療施設、医師、説明、同意。
2. 間質性肺疾患による死亡。治療初期は入院又は準ずる管理。
3. 劇症肝炎・肝不全による死亡。

 
禁忌:本剤過敏症。

アレクチニブ

Alectinib
アレセンサ®
Alecensa®
(中外)
ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺癌。
 
1回300mgを1日2回。
ALK阻害剤。 警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
4.間質性肺疾患。治療初期は入院又は準ずる管理。

 
禁忌:本剤過敏症。
妊婦。


表9.(2)白金製剤(プラチナ製剤)

薬剤名 商品名 適応/用法 特徴 禁忌/警告
シスプラチン
cisplatin
CDDP
ランダ
Randa
(日本化薬)
ブリプラチン
Briplatin
(ブリストル)
シスプラチン
非小細胞肺癌、小細胞肺癌。
70-90mg/m2、1日1回投与、3週間休薬。
 
胸膜中皮腫。
75mg/m2、1日1回投与、20日間休薬。
白金製剤 警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
2.重篤な腎障害。本剤・白金含有製剤。

 
禁忌:
重篤な腎障害。
本剤と白金薬剤の過敏症。
妊婦。
カルボプラチン
carboplatin
CBDCA
パラプラチン
Paraplatin
(ブリストル)

カルボプラチン

(日本化薬)
小細胞肺癌、非小細胞肺癌。
 
1日300〜400mg/m2、4週間休薬。
250ml以上のブドウ糖か生理食塩水に解いて30分以上かけて点滴。
白金製剤:注射
シスプラチン(CDDP)誘導体。腎毒性は軽い。
警告:
医療施設、医師、説明、同意。

 
禁忌:重篤な骨髄抑制。本剤・白金含有製剤過敏症。妊婦。


表9.(3)代謝拮抗剤

薬剤名 商品名 適応 特徴 禁忌/警告
テガフール・ウラシル配合顆粒剤
tegafur(FT,TGF)
uracil
ユーエフティ®E配合顆粒T100,T150,T200:
UFT-E
(大鵬)
肺癌
 
テガフール300〜600mg/m2を1日2〜3回内服
代謝拮抗剤:内服
テガフールは生体で活性化されフルオロウラシル(5-FU)となる。フルオロウラシルの分解をウラシルが抑制する。
警告:
1.劇症肝炎等の肝障害。
2.エスワン(S-1)併用による重篤な血液障害等。

 
禁忌:
1.重篤な骨髄障害。
2.重篤な下痢。
3.本剤の重篤な過敏症。
4.重篤な過敏症の既往歴。
5.ティーエスワン併用中。
6.妊婦。
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合カプセル剤 ティーエスワン®
TS-1
(大鵬)
エスワンメイジ®
(S-1Meiji®)
非小細胞肺癌 朝食後と夕食後、1日2回、28日間連日、その後14日間休薬。これを1クールとする。
体表面積1.25m2未満は40mg/回、1.25 m2以上で1.5m2未満は50mg/回、1.5m2以上は60mg/回。
警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
2.投与制限毒性が骨髄毒性。頻回に臨床検査。
3.劇症肝炎等の重篤な肝障害。
4.他のフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤との併用で、重篤な血液障害等の副作用。
5.用法・用量を厳守。

 
禁忌:
1.本剤に重篤な過敏症。
2.重篤な骨髄抑制。
3.重篤な腎障害。
4.重篤な肝障害。
5.他のフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤投与中。
6.フルシトシン(抗真菌剤アンコチル)投与中。
7.妊婦。
ペメトレキセドpemetrexed
PEM
アリムタ®
Alimta®
(イーライリリー)
悪性胸膜中皮腫
切除不能の非小細胞肺癌
 
1日1回500mg/m2、10分間で点滴、20日間休薬、これを1クール。

 

代謝拮抗剤 警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
2.葉酸とビタミンB12使用。
3.重度の腎機能障害に使用しない。
4.多量の胸水や腹水は排出検討する。
5.間質性肺炎。

 
禁忌:
1. 本剤の重篤な過敏症。
2. 高度の骨髄抑制。
3. 妊婦。
 
注意:
1. 葉酸0.5mg連日経口投与、7日以上前から22日後まで。
2. ビタミンB12、1mg筋肉内注射、7日以上前から22日後まで、9週ごと。
3. シスプラチン(CDDP)との併用が原則、本剤投与後30分後に75mg/m2。
ゲムシタビン
Gemcitabine
GEM
ジェムザール
Gemzar
(イーライリリー)
ゲムシタビン
Gemcitabine
非小細胞肺癌
 
1回1000mg/m2、30分かけて点滴。週1回、3週連続、1週休薬。
代謝拮抗剤 警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
2.週1回30分間点滴静注。
3.高度な骨髄抑制。
4.明らかな間質性肺炎、肺線維症には不可。
5.放射線と同時併用避ける。
6.臨床症状観察、検査

 
禁忌:
1.高度の骨髄抑制。
2.明らかな間質性肺炎や肺線維症。
3.胸部への放射線療法中。
4.重症感染症合併。
5.本剤過敏症。
6.妊婦。


表9.(4)アルカロイド

薬剤名 商品名 適応 特徴 禁忌/警告
アルブミン結合パクリタキセルnab-paclitaxel
nab-PTX
アブラキサン®
Abraxane®
(大鵬)
非小細胞肺癌
 
1日1回100mg/m2、30分以上、週1回3週間で1コース。
アルカロイド 警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
2.骨髄抑制(好中球減少)等の重篤な副作用。
3.パクリタキセル(PTX)と異なる。

 
禁忌:
1.重篤な骨髄抑制。
2.感染症合併。
3.本剤またはパクリタキセル(PTX)やアルブミンに過敏症。
4.妊婦。
 
注意:
1.次コース前に好中球1500/mm3未満、血小板数15万/mm3未満は延期。
2.同一コース内で好中球500/mm3未満、血小板数5万/mm3未満は延期。
パクリタキセル
paclitaxel
PTX
タキソール
Taxol
(ブリストル)

パクリタキセル

Paclitaxel
非小細胞肺癌
 
1日1回210mg/m2、3時間点滴。3週間で1クール。
アルカロイド 警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
2.骨髄抑制による死亡例。
3.重篤な過敏症状予防の前投薬が必要。前投薬実施でも死亡例。

 
禁忌:
1.重篤な骨髄抑制。
2.感染症合併。
3.本剤またはポリオキシエチレンヒマシ油含有製剤に過敏症。
4.妊婦。
5.抗酒癖剤ジスルフィラム、ジアナミド、抗腫瘍剤カルモフール、プロカルバジンと併用禁。
 
注意:
1.20分前までにデキサメタゾン(デカドロン)20mg静脈内注射。
2.30分前までにジフェンヒドラミン(レスタミン)50mg経口投与。
3.30分前までにラニチジン(ザンタック)50mgまたはファモチジン(ガスター)20mg静脈内投与。
ドセタキセル
docetaxel
DTX
タキソテール
Taxotere
(武田)
非小細胞肺癌
 
60mg/m2、1時間以上かけて、3〜4週間毎。
アルカロイド 警告:
1.好中球減少、重篤な骨髄抑制、重症感染症などによる死亡例。以下の患者には慎重に。
(ア)重篤な骨髄抑制。
(イ)感染症合併。
(ウ)発熱を有し感染症の疑われる患者。
2.医療施設、医師、説明、同意。

 
禁忌:
1.重篤な骨髄抑制。
2.感染症合併。
3.発熱あり感染症の疑い。
4.本剤・ポリソルベート80過敏症。
5.妊婦。
 
注意:
1.好中球2000/mm2では投与を延期。
2.250-500mlに混和して、1時間以上かけて静脈注射。
ビノレルビン
vinorelbine
VNR
ナベルビン®
Navelbine®
(協和発酵キリン)
非小細胞肺癌
 
1日20-25mg/m2を1週間間隔で緩徐に注射。
ビンカアルカロイド 警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
2.骨髄機能抑制による死亡例。

 
禁忌:
1.著しい骨髄機能低下。
2.重篤な感染症を合併。
3.本剤・他のビンカアルカイド系薬に重篤な過敏症。
4.髄腔内投与。
 
注意:
白血球数が2000/mm2未満では延期。
50mlに溶解し、10分以内に終了する。
イリノテカン
irinotecan
CPT-11
トポテシン
Topotesin
(第一)
カンプト
Campto
(ヤクルト)
小細胞肺癌。非小細胞肺癌
 
A法:1日1回、100mg/m2、1週間間隔、3-4回点滴、2週間休薬。これを1クール。
 
又は
B法:1日1回、150mg/m2、2週間間隔、2-3回点滴、3週間休薬。これを1クール。
 
いずれも500mlに混和して90分以上かけて点滴靜注する。
アルカロイド 警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
2.骨髄機能抑制、下痢による死亡例。以下の患者には慎重に。
(ア)骨髄機能抑制。
(イ)感染症合併。
(ウ)下痢(水様便)。
(エ)腸管麻痺、腸閉塞。
(オ)間質性肺炎または肺線維症。
(カ)多量の腹水・胸水。
(キ)黄疸。
(ク)アタザナビル(抗HIVレイアタッツ)投与中。
(ケ)本剤過敏症。
3.骨髄機能抑制、高度の下痢による死亡あり、頻回に検査を行う。
4.骨髄機能抑制による死亡防ぐために以下に注意。
(ア)末梢血液検査。
(イ)白血球数3000/mm2未満、血小板数10万/mm3未満で中止か延期。
(ウ)血球数3000/mm2以上、板数10万/mm3以上でも急激な現象傾向なら中止か延期。

 
禁忌:
1.骨髄機能抑制。
2.感染症合併。
3.下痢(水様便)。
4.腸管麻痺、腸閉塞。
2.間質性肺炎または肺線維症。
3.多量の腹水・胸水。
4.黄疸。
5.アタザナビル(抗HIVレイアタッツ)投与中。
6.本剤過敏症。


表9.(5)抗生物質

薬剤名 商品名 適応 特徴 禁忌/警告
アムルビシン
Amrubicin
カルセド
Calsed
(日本化薬)
非小細胞肺癌、小細胞肺癌 45mg/m2を20mlに解いて、1日1回3日連日静脈内投与。3-4週間休薬。これを1クール。 警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
2.間質性肺炎による死亡例。
3.骨髄機能抑制、重篤な感染症による死亡例。異常時には投与中止する。

 
禁忌:
1.骨髄機能抑制。
2.重篤な感染症合併。
3.明らかな間質性肺炎や肺線維症。
4.心機能異常。
5.他のアントラサイクリン系薬剤等心毒性。ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ドキソルビシン(アドリアシン)、エピルビシン(ファモルビシンン)、ピラルビシン(ピノルビン、テラルビシン)。
6.本剤過敏症。
7.妊婦。


表9.(6)モノクロール抗体

薬剤名 商品名 適応 特徴 禁忌/警告
ニボルマブ nivolumab オプジーボ®
Opdivo®
切除不能非小細胞肺癌 T細胞のPD-1をブロック。
 
1回3mg/kgを2週間間隔で点滴静注する。
警告:
1.医療施設、医師、説明、同意。
2.間質性肺炎に死亡例。異常があれば投与を中止し、副腎皮質モルモン剤の投与。

 
禁忌:本剤の過敏症。
 
注意:
慎重投与:
自己免疫疾患の合併または既往歴。
間質性肺炎のある患者。
 
筆者:重大な副作用の報告があります。


▲このページのTOPへ