外科
2024年10月現在 |
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診療部長:岡本 友好 |
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学会施設認定
1. | 日本外科学会専門医制度修練施設 |
2. | 日本乳癌学会認定施設 |
3. | 日本消化器外科学会専門医修練施設 |
4. | 内分泌・甲状腺外科専門医制度認定施設 |
5. | 肝胆膵外科高度技能専門医修練施設B |
6. | 日本がん治療認定研修施設 |
7. | 日本大腸肛門病学会認定施設 |
8. | 日本大腸肛門病学会専門医修練施設 |
9. | 呼吸器外科専門医関連施設 |
10. | 日本胸部外科学会認定医関連施設 |
11. | 日本胆道学会認定指導医制度指導施設 |
12. | 日本膵臓学会認定指導医制度指導施設 |
13. | 食道外科専門医認定施設 |
診療内容
慈恵医大第三病院外科は消化器外科(上部消化管:食道、胃、十二指腸、下部消化管:大腸、肛門、肝胆膵:肝臓、膵臓、胆道)、呼吸器外科(肺、縦隔)、乳腺・甲状腺・内分泌外科(乳腺、甲状腺、副甲状腺)、血管外科、小児外科と外科全体をほぼ網羅した診療体制を取り、それぞれに熟練した専門医がおり患者さんのニーズにお応えで きる診療をしております。血管外科および小児外科は非常勤医師で対応しております。
手術は、年間約1,100例を毎年行っています。食道切除、肝切除、膵切除、肺切除などの侵襲度の高い手術から痔核、ヘルニアなどの比較的小さいものまで幅広く行っております。また、近年標準術式になりつつある内視鏡手術(内視鏡を使用し、体に大きな傷をつけず手術を行う)も、食道切除、胃切除、大腸切除、肺切除、肝・膵切除、胆道手術に適応しております。乳腺切除では 病態に即した適正な手術(乳房温存や再建)を専門医のもと施行しております。
また、当院麻酔科では、手術中の管理だけでなく、術後の疼痛の対策も積極的に取り組んでいます。術後鎮痛のアルゴリズムを患者さん毎に作成し、持続的な痛み止めの投与と、頓用の痛み止めを段階的に準備し、患者さんが、痛みを可能な限り感じないで周術期を過ごせるように努力しています。
外来で行う化学療法につきましては、自宅からの通院で治療可能な患者さんは、化学療法室での外来治療が基本です。外来化学療法室で治療を行うことが決まった患者さんやご家族には、外来での治療をイメージすることで少しでも安心していただけるよう、外来化学療法室の見学とオリエンテーションを行っております。抗がん剤投与は、十分な知識と経験を有する医師が施行する他、看護師・薬剤師が協力し、副作用に対する支持療法を積極的に行うことで、安心した治療の継続を目指し努力しています。
またリラックスして治療が受けられるように、各ベッドにはテレビも用意しています。
外科診療の受付時間は原則として午前8時00分から11時30分までですが、ほぼ24時間体制で対応いたしますのでお気軽にご相談ください。
診療のトピックス
① ナビゲーション手術
当科では、近年汎用されつつある術中に患者さんの情報をリアルタイムに提供し、手術の方針や術式に反映させるナビゲーション手術を積極に取り入れ施行しております。
ICG(インドシアニングリーン)という特殊な検査薬を投与後、近赤外線特殊カメラを使用することによって腫瘍の位置や、リンパ流の流れ、臓器血流を確認することができ、肝、膵、大腸手術で応用しております。
また最新のハイテクナビゲーション手術室があり、敷地内に併置しております高次元医用画像工学研究所と共同してコンピュータ支援の手術を施行しております。
ICG蛍光内視鏡による肝腫瘍の確認
膵切除の際のリンパ流の流れの検索
ICG蛍光内視鏡による大腸手術における大腸吻合部の血流確認
ハイテクナビゲーション手術室での位置認識誘導型ナビゲーションシステムを利用した肝切除(左)と
現在の切除している位置がリアルタイムで表示される画像(右)
② TaTME手術(経肛門的全直腸間膜切除術)
直腸の腹腔鏡手術は肛門に近づく程に難しく、特に男性の狭骨盤、巨大腫瘍、肥満症例では手術器具の操作が困難なため難易度が高くなります。骨盤という狭い空間には、排尿や性機能などの自律神経や重要な臓器(男性では前立腺・精嚢、女性では子宮・膣)があるため、それらを温存しながら癌をきれいに取り除くのは高度な技術を要します。
これらの問題点を解決する手術として考案されたのがTaTMEです。TaTMEは腹腔側と肛門側から同時に手術を行う方法で、神経、血管、重要臓器を鏡視下に温存しつつ、癌の根治性を高めるメリットがあります。5人の外科医が2チームに分かれ、腹腔側と肛門側から同時に手術を行うため、手術時間を明らかに短縮します。欧州を中心に急速に普及している新しい手術方法ですが、国内での普及は一部の癌専門施設を除き十分ではありません。当院では肛門縁から10cm以内の直腸病変に対してこの手術を導入しています。従来の腹腔鏡手術では切除困難、肛門温存が困難である症例にも対応ができる可能性があります。
当科では2020年よりTaTMEを開始し、癌の根治性を高めるだけでなく、手術時間が短縮し(約5時間から3時間)、術後在院日数が短縮(約3週間から10日間)しました。また、赤外線カメラを用いた腸管血流評価、経肛門的吻合部補強による縫合不全対策により,一時的人工肛門造設を極力回避するようにしています。
③ ヘルニア手術
各種ヘルニアに対する診療は、豊富な経験と実績から難治例も含め全国から多くの患者さんのご紹介を受けております。
- (1)ヘルニアとは
- (2)鼠径部ヘルニア
- (3)腹壁瘢痕ヘルニア
- (4)傍ストーマヘルニア
ヘルニアは腹壁の筋膜が弱り、内臓が外に飛び出してしまう病気です。
当科ではヘルニア診療を積極的に行っており、全国の医師が見学に来られるトレーニング機能を有しています。鼠径部ヘルニアと腹壁ヘルニアについて、それぞれの治療法をお話しします。
内臓の飛び出しが鼠径部(そけいぶ,股の付け根)におこると鼠径部ヘルニア、おなかにできると腹壁ヘルニアと呼ばれます。腹壁ヘルニアは手術の創にでることが多く、腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアと呼ばれます。どちらのヘルニアも膨隆(ぼうりゅう、ふくらみ)だけで痛みや違和感がない場合経過を観ることもありますが、 腸がヘルニア内にはまり込む“嵌頓(かんとん、腸が壊死 [えし]することがあります)”が時々おこるため基本的には手術が行われます。
鼡径ヘルニアと大腿ヘルニアに分類され、前者は高齢男性に、後者は高齢女性に多く発生します。治療は弱った部分をメッシュで覆う手術ですが、到達法が鼠径部切開法と腹腔鏡法に分かれます。両者には一長一短がありますが(下表)、痛みが少ない観点から、当科では腹腔鏡手術を第一選択としています。前立腺摘出後や抗血栓治療を継続しなくてはいけない方は鼠径部切開法で行っています。麻酔法は基本的に全身麻酔ですが、患者さんの状況により使い分けており、鼠径部切開法は局所麻酔でも可能です。入院期間は2泊3日を基本としています。
鼠径部ヘルニア修復術の手術成績
当科では2003年7月から2021年2月までに2,426件の手術を行い、再発率は0.1%程度です。
腹腔鏡下鼡径ヘルニアの実際
腹壁瘢痕ヘルニアはおなかの手術を行う際に作られる創にできるヘルニアです。創感染、肥満、喫煙、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、ステロイド長期投与などは危険因子です。
経年的に増大傾向を示すことがあり、肥満は増悪因子です。大きくなると、人の頭よりも大きくなることがあり(下図)、患者さんはひどい不快感を訴えます。
腹壁瘢痕ヘルニアは、大きさ、初発・再発、腹壁の状態などによって、複雑型と非複雑型に分類され、複雑型の治療は困難です。
当科では、複雑型ヘルニア治療に積極的に取り組んでおり、近年米国を中心に行われるようになった腹横筋リリースにによる修復術 (TAR)を導入し、良好な成績を収めています。TARは樽のたがを矯正するような手術ですので、患者さんの満足度は高く、再発率は低率です。
2016年6月からこれまでに20症例を経験し、再発はありません。
一方、非複雑型ヘルニアは腹腔鏡手術を第一選択としています。腹腔鏡手術でもヘルニア門を閉じてメッシュを当てるIPOM-Plus法、ヘルニア門を閉じないでメッシュを当てるsIPOM法など、ヘルニアのサイズをはじめとする状況により様々な技法を使い分けています。
傍ストーマヘルニアは腹壁瘢痕ヘルニアのひとつで、ストーマ(人工肛門)作成後に最も多い合併症です。術後1年で30%、2年で40%、それ以降は経年に応じ増加し50%以上のストーマ保有者に発生します。ほとんどの方は経過観察されますが、時に嵌頓や腸閉塞の原因になり、また大きくなるとストーマ装具の貼布が難しくなるため手術が必要になることがあります。当科では傍ストーマヘルニアに対し積極的に手術を行っており、2013年5月から32件の腹腔鏡下修復術 (Sugarbaker法)を行いました。再発率は9%(3例)ですが、2例はメッシュが自然穿孔したもので、メッシュ自体に問題がありました。
したがって、実質的な再発率は3%です。現在、そのメッシュは使用していません。
その他、腰にできるヘルニア、会陰部にでるヘルニアなど腹壁に生じるヘルニアに関しては積極的手術治療を行っております。もしお困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
各診療班の紹介
呼吸器外科
スタッフ | ||
佐藤 修二 | ||
外科診療医長(准教授) | ||
資格等: | 日本外科学会専門医、指導医 日本呼吸器外科学会評議員 日本胸部外科学会指導医 日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医、指導医 呼吸器外科専門医合同委員会呼吸器外科専門医 |
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稲垣 卓也 |
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外科診療医員 | ||
資格等: | 日本外科学会専門医、指導医 |
診療内容
原発性肺癌をはじめとする肺疾患や、縦隔・胸壁疾患の手術を行います。積極的に内視鏡手術の技術を取り入れ、低侵襲で、かつ根治性と安全性が高い手術を提供しています。比較的早期の原発性肺癌では標準術式である肺葉切除+リンパ節郭清を、約1.5㎝の傷を側胸部に4つ(肺を取りだすために最後に少し1つの傷を広げます)程で手術し、約1週間の入院です。原発性肺癌のほかには、転移性肺腫瘍、良性肺腫瘍、気胸や嚢胞性疾患、胸部外傷、膿胸や炎症性疾患(結核・非定型抗酸菌症など)、重症筋無力症や胸腺腫をはじめとする縦隔腫瘍、横隔膜や胸壁の腫瘍などが対象疾患になります。このように扱う疾患は多種、多様で、呼吸器内科とも連携しつつ集学的治療を行います。高齢者や心臓・腎臓疾患、糖尿病などの合併症があり、手術が困難な場合もありますが、総合病院の強みを生かして積極的に治療に取り組んでいます。
診療実績
・手術症例数(うち胸腔鏡手術)
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
原発性肺悪性腫瘍切除術 | 37(33) | 19(17) | 42(42) | 35(35) | 45(44) |
転移性肺腫瘍切除 | 11(10) | 12(12) | 11(11) |
7(7) | 5(5) |
気胸手術 | 13(13) | 27(27) | 13(13) | 14(14) | 12(12) |
縦隔腫瘍切除 | 3(3) | 3(1) | 4(2) | 0 | 0 |
その他の手術 | 13(13) | 9(9) | 8(8) | 18(18) | 10(10) |
合計 | 77(72) | 70(66) | 78(76) | 74(74) | 72(71) |
上部消化管(食道・胃・十二指腸)外科
スタッフ | ||
松本 晶 |
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外科診療医長・医局長(講師) | ||
資格等: | 日本外科学会 認定医 専門医 指導医 日本内視鏡外科学会 技術認定医 日本消化器外科学会 専門医 指導医 消化器がん外科治療認定医 日本食道学会 食道科認定医 食道外科専門医 評議員 |
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入村 雄也 |
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外科診療医員 | ||
資格等: | 日本外科学会専門医 腹部救急認定医 |
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山下 麗香 |
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外科診療医員 | ||
資格等: | 日本外科学会専門医 |
診療内容
上部消化管外科について
消化管とは口から肛門までの食べ物の通り道のことを示し、その中の上半分(食道、胃、十二指腸)にできた病気の外科治療を主に担当します。大きく分けて悪性疾患(食道癌、胃癌、GIST等)と良性疾患(食道アカラシア、食道裂孔ヘルニア、胃食道逆流症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍等)がありますが、それぞれの患者さん個人にあった状態を見極めて最善の治療を行えるように心がけています。
低侵襲治療について
現在、消化管の癌は早期であれば内視鏡を使って臓器の機能を犠牲とすることなく、治癒させることが可能です(内視鏡手術)。各症例について毎週消化器内科、内視鏡部と合同カンファレンスを施行することで、極力臓器を温存する治療を心がけています。また、それよりも進行した場合でも体の外側をなるべく切ることなく、体の中の病気を取り除く、鏡視下手術(腹腔鏡、胸腔鏡)というものがあり、内視鏡外科学会が認定した医師の指導のもとで積極的に取り入れています。
高齢者の治療
近年の高齢化社会に伴い、手術患者も高齢化しています。実際ここ3年間で当院で食道癌の手術を受けた患者の半数以上が75歳以上でした。高齢者は若年者に比べ並存疾患が多く、生命維持の予備力がなく、治療の際に色々な障害をもたらします。当院では高次機能病院として、呼吸器、循環器、神経、腎、泌尿器、運動器などそれぞれのエキスパートの医師が常に勤務しており、様々な並存疾患に対応するとともに、低侵襲治療を行うことで負担を減らし、周術期にリハビリテーション、疼痛管理や栄養管理を個別化されたプログラムにより、治療後も社会復帰できることを目指しています。また、術後早期や高度進行がんなど、個人では自立が困難な場合は在宅支援や地域連携と積極的に連絡をとり、生活の質をなるべく落とさない治療を心がけています。
術前後の栄養管理
上部消化管は口から近い場所にあるため、発症や手術の影響で食事摂取に影響が出やすい臓器です。そのため、手術前や手術の後も安定した栄養摂取ができるように管理栄養士とともに指導を行っていきます。
手術以外の治療
悪性疾患では化学療法(抗癌剤治療)や放射線治療などの手術以外の治療も重要で、すべてを組み合わせて総合的に、そして個々の患者さんにあわせて個別的に治療を組み立ててゆかなければなりません。私たちは消化器内科、放射線科、総合診療科、耳鼻咽喉科、病理診断科などとも協力をしあって、これらの治療にも取り組んでいます。
症状緩和の手術
悪性疾患が高度に進行した場合、現在の医療では治すことができないこともあります。しかし、その際に食事が食べられない状態を改善したり、痛みや苦しみをとるといった、症状改善のための手術もあります。当科ではこういった患者さんにもご希望と状態に合わせて積極的に治療を行っていくこととしています。
代表的な悪性疾患
① 食道癌:当院は2020年に食道学会の食道外科専門医認定施設に認定されました。この認定は日本全国で2021年の時点で130施設にのみに認められており、食道癌の治療成績の優位性などが示されています。
<食道癌の内視鏡治療>
癌が早期の場合はリンパ節転移の可能性が低い為、臓器を温存したまま内視鏡的に癌のみを切除することが可能です。近年はその適応も広がっており、以前は食道切除が必要だった全周性に近い表在癌でも病状に応じて積極的に内視鏡治療を行っています。
【内視鏡像】
亜全周性表在癌
内視鏡切除後
<食道癌の手術>
内視鏡切除が適応にならない場合、食道切除が基本的な治療になります。食道は消化管の中で唯一腹部以外にその大部分が存在する臓器で、心臓、肺、大動脈に取り囲まれて体の中心に存在するため、手術でのアプローチが難しい場所とされてきました。しかし、鏡視下手術は小さな傷で奥までアプローチすることができ、この問題を大きく改善し手術成績を上げることに成功しています。当院でも可能な限り鏡視下での手術を推奨しています。
鏡視下食道切除後約2か月の創部の様子
<食道癌の集学的治療>
食道癌は抗がん剤や放射線治療などが比較的効きやすい癌だということがわかっています。そのため、患者の病状によっては手術の代わりにしたり、内視鏡切除や手術切除と組み合わせることで癌の根治率を上げることに成功しています。高度に進行した場合でも治療により恩恵を受ける場合が多く、あきらめないことが結果につながることが多い疾患です。
② 胃癌:近年、早期胃癌で発見される患者さんが増加傾向にあります。病状に応じて、ごく早期であれば内視鏡的切除を行い臓器の温存が可能です。また、手術が必要な場合でも、身体への負担を軽減することを目的として、腹腔鏡補助下手術を推奨しています。また、以前だと胃全摘を行っていた場合でも、逆流防止機能付きの再建を行う噴門側胃切除や少しでも胃を温存する幽門側胃切除など、術式を工夫することで極力胃を一部でも残し、術後の食生活への負担を少なくする努力をしています。進行胃癌に対しては、根治性を重視した手術を行い、抗がん剤等の集学的治療を追加することでしっかりと癌を直すこと心がけています。
③ GIST:近年、癌とは違った悪性腫瘍でGIST(ジスト:Gastrointestinal Stromal Tumor)という病気が確立されました。このGISTという病気は胃癌と違ってリンパ節に転移する可能性が非常に低く、通常リンパ節郭清を必要としません。そのため、機能温存のためLECS(laparoscopy endoscopy cooperative surgery、腹腔鏡・内視鏡合同手術)など患者さん個人にあった、より侵襲の少ない治療を実践することが出来ています。
④ その他の良性疾患:逆流性食道炎、食道アカラシア、胃十二指腸潰瘍などの良性疾患につきましても内科的な治療不応例や急性増悪時には手術治療が必要となります。この際も状態が許せば腹腔鏡手術など患者さんの早期回復を念頭に入れて積極的に低侵襲治療を行っております。
診療実績・手術症例数(うち胸腔鏡、腹腔鏡手術)
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
食道切除再建(鏡視下) | 13(13) | 11(11) | 15(14) | 17(15) | 14(14) |
胃癌、胃腫瘍 切除再建(鏡視下) | 59(31) | 44(19) | 48(23) | 47(27) | 37(20) |
下部消化器(大腸・肛門)外科
スタッフ | ||
諏訪 勝仁 | ||
外科診療副部長(准教授) | ||
資格等: | 日本外科学会専門医、指導医 |
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牛込 琢郎 |
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外科診療医員 | ||
資格等: | 日本外科学会専門医 |
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榎本 浩也 |
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外科診療医長(講師) | ||
資格等: | 日本外科学会専門医 日本消化器外科学会専門医、指導医 日本内視鏡外科学会技術認定医 消化器がん外科治療認定医 日本大腸肛門病学会専門医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本臨床肛門病学会認定医 四段階注射法講習会受講 仙骨神経刺激療法講習修了 da Vinci surgical system術者認定取得 マンモグラフィー読影認定医 |
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力石 健太郎 |
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外科診療医員 | ||
資格等: | 日本外科学会専門医
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北川 隆洋 |
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外科診療医員 | ||
資格等: | 日本外科学会専門医 四段階注射法講習会受講 |
診療内容
当科では、年間170件以上の大腸手術を行っており、内視鏡外科学会の認定する「技術認定医」を取得した2名の医師を中心に高い技術を提供できる環境が整っています。
大学病院の使命として、がん以外の併存疾患をお持ちの患者さんに対しても、各診療科と連携し、安全にクオリティの高い手術・治療を提供できるように常に努力しています。
大腸がんの手術に関しては、特別なケースを除き、がんの進行度を問わず、原則として腹腔鏡手術を第一選択として行っております。また、肛門に近く、通常なら永久人工肛門造設を必要とする直腸がんの場合でも、可能な限り永久的人工肛門にならないよう、括約筋間直腸切除(内肛門括約筋切除、ISR:intersphincteric rsection)や、術前放射線化学療法を積極的に行い、肛門温存を心がけております。
その上で人工肛門の造設が必要な患者さんに対しては、ストーマ専門外来を設けて十分なアフターケアに努めます。
早期がんに対しては、消化器肝臓内科・内視鏡部と連携し、内視鏡的粘膜切除術(EMR)・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行う事で、侵襲の少ない治療の選択を心がけています。
腹腔鏡手術:従来の開腹手術では20cm前後の開腹創が必要とされましたが、腹腔鏡下手術では、創は4-6cm程度で済みます。これが患者さんにもたらす効果は、手術直後の痛みの軽減→早期社会復帰です。排ガス、排便の時期が早い事が消化管術後患者さんにとっては最も重要な事柄です。早期の食事開始が可能となり、早期退院、早期社会復帰に繋がると考えられています。これが「低侵襲手術」と言われる理由です。さらに、腹腔鏡手術の利点は低侵襲性だけではなく、その視野の良さから開腹手術よりも精緻な手術が可能であることです。狭い骨盤内の神経など、肉眼では見えないものが視認可能となり、手術の精度を向上させる事ができます。腸閉塞や腹膜炎を合併した緊急手術や、気腹(お腹に空気を入れて膨らませる)に危険を伴う全身状態の患者さんなど、特殊な状況を除いて、当科では原則腹腔鏡手術を第一選択として行っております。
括約筋間直腸切除(内肛門括約筋切除、ISR:intersphincteric rsection):肛門に近い直腸がんに対する手術で、肛門括約筋(肛門を締める筋肉)のうち、内側の筋肉である内肛門括約筋までを切除する事で腫瘍を取り除き、外側の筋肉である外肛門括約筋を残して吻合する術式を括約筋間直腸切除(内肛門括約筋切除、ISR:intersphincteric rsection)と言います。これまでは、腫瘍が肛門から非常に近い直腸がんに対しては、永久的人工肛門の造設が必要でした。しかし、ISRを行う事で肛門の温存が可能になる場合は、腫瘍の進行度や肛門機能を考慮した上で、積極的に取り組んでいます。
放射線化学療法:大腸がんに対する放射線化学療法は、①直腸がんの局所再発に対するもの、②手術前に照射し病変を縮小させ切除率を向上させるものに分けられます。放射線化学治療は目的により、治療前に照射領域、照射量、治療期間を含めた治療計画を立て、それをもとに外来通院にて治療を行います。放射線治療は、放射線科医師が行うため、当科では放射線科とも連携をとりながら治療を行っています。本療法は局所再発率の低下や、肛門温存の向上につながると考えられます。
仙骨神経刺激療法(SNM):仙骨神経刺激療法(SNM)は、心臓のペースメーカーに似た刺激装置を殿部に埋め込むことで排便に関連した神経を刺激し、便失禁(便漏れ)症状の改善を図る手術です。8割程度の患者さんに症状の改善が確認されています。直腸癌や肛門疾患の術後、括約筋機能低下など、様々な原因の便失禁に対して保険適応があります。2週間程の試験的刺激を行い効果が確認された場合のみ刺激装置の埋め込み手術へと進みます。
内科・内視鏡部との連携:当院内視鏡部は、「安全で確実、苦しくない内視鏡」をモットーとした内視鏡診療を行っており、現在日本で実施可能な最先端の高次内視鏡治療を積極的に実施しています。
早期大腸がんに対しては根治的な内視鏡的切除術(ESD/EMR)を積極的に行っております。昨年度の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は年間66件、内視鏡的粘膜切除術(EMR)は年間365件でした。内視鏡学会認定指導施設として常に高いレベルの診療が行われており、外科と緊密な連携のもと、診療にあたっています。
・手術症例数(うち腹腔鏡手術)
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
結腸切除 | 87(74) | 72(55) | 87(74) | 74(63) | 79(69) |
直腸手術 | 49(34) | 55(40) | 49(34) | 31(31) | 33(27) |
人工肛門関連手術 | 47 | 14 | 47 | 12 | 9 |
肛門疾患手術 | 43 | 37 | 39 | 37 | 39 |
肝臓・胆道・膵臓外科
スタッフ | ||
岡本 友好 | ||
外科診療部長(教授) | ||
資格等: | 日本外科学会専門医、指導医、代議員 日本消化器外科学会専門医、指導医 日本消化器病学会専門医、指導医 日本臨床外科学会評議員 日本肝胆膵外科学会高度技能指導医、評議員 日本胆道学会指導医、評議員 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 Fellow of American Society of Clinical Oncology Fellow of American College of Surgeon Fellow of Surgery of the Alimentary Tract 日本膵臓学会指導医 |
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二川 康郎 |
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外科診療医長(准教授) | ||
資格等: | 日本外科学会専門医、指導医 |
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坂本 太郎 |
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外科診療医長(講師) | ||
資格等: | 外科学会 指導医 |
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安田 淳吾 |
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外科診療医員 | ||
資格等: | 日本外科学会専門医
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診療内容
肝胆膵外科は外科領域において特に専門性の高い分野であり、第三病院は日本肝胆膵外科学会より肝胆膵外科高度技能修練施設に認定されています。また、治療の選択肢も多岐にわたり、内科、放射線科、内視鏡科などと同一疾患に対して連携をとり最適の治療を選択する集学的治療を行っております。治療方針はエビデンスに基づき、各科を含めた院内のカンファランスを行い決定、病院全体で一貫した治療を提供しています。
特に肝腫瘍は背景の肝機能やステージによってラジオ波凝固、血管閉塞療法、手術を各科のスペシャリストが対応しております。肝機能障害を有する患者さんや大量肝切除を予定する場合は術前にカテーテル治療(経皮経肝門脈塞栓術)の処置にて肝不全の予防を行い、術後には早期に消化器肝臓内科にて肝炎治療(抗ウイルス治療)、化学療法を行うなど、総合大学病院の特性を生かし、専門医師が各分野の専門診療を担当し、患者さんのトータルケアを行い病態改善に努めます。 胆道疾患(胆石症、胆嚢炎、胆管炎)も胆嚢、胆管ドレナージや内視鏡的結石除去術後すみやかに原則腹腔鏡下手術にて胆嚢摘出術を施行しております。
胆道がん、膵がんは手術のみならず術後補助療法も外科が担当して行い、切除不能例に対しましては放射線、胆管ステント、化学療法と様々な治療技術を組み合わせ集学的に治療しております。当科では切除不能例に対しては、術前化学療法(場合によっては放射線療法)を行い、その後に手術を積極的に実施しています。
膵癌の治療方針
胆道癌の治療方針
表中略語
GEM:塩酸ゲムシタビン CDDP: シスプラチン n-PT: パクリタキセル
5-FU: フルオウラシル LV: レボホリナート
FOLFIRINOX: フルオウラシル, レボホリナート, オキザリプラチン, イリノテカン
・手術症例数(うち腹腔鏡手術)
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
肝胆膵外科高難度手術* | 41 | 40 | 42 | 37 |
肝切除 | 34(4) | 39 (13) | 30 (11) | 31 (22) |
膵切除 | 28(2) | 24 (6) | 33(12) | 26 (6) |
胆のう摘出術 | 112 | 128 | 115 | 135 |
乳腺・甲状腺・内分泌外科
スタッフ | ||
田部井 功 | ||
外科診療副部長(教授),NST総括医師 | ||
資格等: | 日本外科学会専門医、指導医、専門医 |
診療内容
当科では,年間約120件前後の乳腺・甲状腺・副甲状腺手術を行っております。
乳癌の手術に関しては,特別な場合を除き,原則としてガイドラインに沿った標準的治療を行っております。進行乳癌に対しては、ホルモン療法や化学療法、分子標的療法、放射線療法などを併用した集学的治療を行っております。
総合大学病院の利点を生かし、放射線科、歯科、婦人科、脳外科、内科など様々な診療科や薬剤部、栄養部など多種分野の専門家の協力を得て、いかなる状態にも対応できるよう診療科横断的治療を目指しています。さらに乳がん看護認定看護師はじめがん薬物療法、緩和ケア、皮膚排泄ケア、がん放射線療法などの専門性を生かした認定看護師、薬剤師等にも参加していただき、患者さんに病状及び治療内容をより理解し、安心して治療に専念していただけるよう心掛けています。 またBreast & Thyroid Cancer Boardを開催し、チームとして情報共有の場を設け、総合的に、集学的にそして個々に合った最適な方法で行えるようにしています。 整容性が求められる場合、形成外科による乳房再建術も積極的に推奨しています。特殊なケースとして妊娠期乳がんや、男性乳がんの治療も行っています。乳癌の手術と同時に行ったり(一次再建術)、時間がたってあとから行ったり(二次再建術)、自己組織や人工物を使用するなどすべて健康保険にて行えます。
手術:乳癌の手術療法は大きく分けて、全摘術と温存術に分かれます。各種検査診断に基づき最適な方法を提供し、条件・適応位応じた標準的方法を選択します。また術前リンパ節転移の可能性がない場合、リンパ浮腫などの弊害がみられる腋窩リンパ節廓清術を省略できるセンチネルリンパ節生検術も行っています。 腋窩リンパ節郭清を行った患者さんに対しては、リハビリテーション科と協力し、術後翌日より肩腕関節拘縮予防のための患側上肢のリハビリテーションを開始します。また、リンパ浮腫予防のため、入院中、退院後に日常生活指導を行っています。
甲状腺の手術は、良性腫瘤と悪性腫瘤のどちらも行っています。手術方法は標準的治療を原則としています。副甲状腺は癌の近くでなければできるだけ温存するよう心がけています。
ホルモン療法:ホルモン感受性乳癌に対しては、ガイドラインに沿って適切なホルモン療法を行っております。遺伝子診断に関しては、適宜必要に応じて近隣施設の協力を得て行っております。
化学療法:当院では基本的に外来通院にて化学療法を行っております。生命予後の延長を目指し、積極的に周術期化学療法も導入しています。外来化学療法室の見学やオリエンテーションを十分に行い、治療の流れや副作用,その対策を患者さん自身に理解していただけるよう説明します。また化学療法開始後も投与前に薬剤師が協力し、副作用に対する支持療法を積極的に行い、安心した治療継続を目指しています。特に懸念される脱毛に対しては最新の頭皮冷却脱毛予防装置を導入しており、脱毛の予防そして毛髪の回復に良好な効果が確認されています。
放射線療法:乳癌に関しては、乳房部分切除術後の残存乳房に対する照射、再発部位や骨転移などに対する照射、また皮膚潰瘍を伴う非切除乳癌に対する局所コントロール目的の照射、骨転移による疼痛や骨折の緩和目的の照射など、放射線科医師と連携し、適切な照射方法を選択します。基本的には全て外来通院にて行っています。甲状腺癌に対しては、外照射は当院の放射線科にて行います。術後の病理結果より内照射(アブレーション)が必要と判断した方は、新橋にある本院に紹介しています。
診療実績
・手術症例数
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
乳腺手術 | 114 | 92 | 112 | 109 | 149 |
一次的再建 | 13 | 5 | 13 | 2 | 2 |
甲状腺手術 | 19 | 8 | 19 | 11 | 10 |
副甲状腺手術 | 10 | 5 | 6 | 10 | 11 |
多職種参加の乳腺・甲状腺キャンサーボード(がん診療会議)
薬物療法の副作用である脱毛を軽減抑制そして回復を早める頭皮冷却とは?
その他
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救急・時間外診療の対応
時間にかかわらず随時お引き受けいたしますので、救急室にご連絡のうえお越しください。
外来担当医表
専門医制度と連携したデータベース事業について
当院は、患者さんにより適切かつ最善の医療を提供するために、外科系の専門医制度と連携したデータベース事業、一般社団法人National Clinical Database (NCD)に参加しております。
詳しくはNCDホームページをご参照ください。何卒、ご理解ご協力賜りますよう宜しくお願い申し上げます。