医療・保健・福祉関係者及び介護をされる皆様へ

当院で扱う認知症患者の特徴(診療科別)

当院では認知症の診断及び治療を行う際に、以下の3診療科が主として対応を行っています。ここでは当該3診療科が扱う認知症患者さんの特徴及び治療方法について説明いたします。

脳神経内科で扱う認知症患者の特徴・治療方法について

認知症は多様な原因で引き起こされる症候群であり、原因疾患を特定することが重要です。認知症患者の症状は、中核症状である記憶障害以外に様々な症状が認められます。脳神経内科で扱うものとしては、歩行や動作などの運動症状を併発する神経変性疾患や脳血管障害などがあります。まれにビタミン欠乏や甲状腺機能低下などの内科疾患に伴うものもあります。神経変性疾患として代表的なものはパーキンソン病です。手のふるえや動きが緩慢、歩きがぎこちなく、転倒しやすいなどの症状があります。レビー小体型認知症もパーキンソン症状を認めます。パーキンソン病以外にも多くの疾病が歩行障害などの運動症状を認めます。認知症といわれてもこのような症状が加わっていないかよく観察して、その疑いがあれば脳神経内科の診察が必要です。治療は認知機能障害に対する薬剤に加えて運動症状改善への対策を行います。パーキンソン病であればドパミン製剤などの投与を行います。患者さんの日常生活動作や生活の質の向上を念頭にいれ、認知機能だけでなく運動機能の改善を行うことが重要です。

脳神経内科診療部長 仙石錬平

精神神経科で扱う認知症患者の特徴・治療方法について

精神科ではうつ病、不安障害・ストレス障害、統合失調症、不眠症、てんかんなどとともに認知症を診てきた歴史があります。
当科では2005年に専門外来として「もの忘れ外来」を開設し、認知症の診断・治療を行って参りました。そこではもの忘れを気にして来院される方が多いのですが、なかにはうつ病やせん妄の方もいらっしゃいます。そのような疾患との鑑別や各種認知症の診断のために、医師による診察以外にも臨床心理士による認知記銘力の評価や、CTやMRIやアイソトープ検査を用いた画像検査、脳波検査などを必要に応じて行って参ります。
治療においては、抗認知症薬だけでなくBPSDと言われる認知症の周辺症状に対し、必要に応じて薬物の調整を行っております。
認知症には身体症状も認めるものもあり、また身体合併症がある患者さんもいらっしゃいます。その際には総合病院の強みをいかし脳神経内科や脳神経外科をはじめ身体診療科とも連携を取りながら診断・治療を行っております。
治療方針がたち状態が落ち着かれた方には近所にかかりつけ医の先生に、通院が大変になった方は訪問診療の先生への御紹介も積極的に行っております。

副センター長/精神神経科 矢野勝治

脳神経外科で扱う認知症患者の特徴・治療方法について

認知症の原因で最も多いのはアルツハイマー型認知症ですが、それ以外にも数多くの原因が存在します。根本的治療が難しいものが多い中で、適切な診断と治療により治る認知症も存在します。その中には、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍など、外科手術により治るものも存在します。脳神経外科では、外科治療により治せる認知症を適切に診断し、確実に治療していきます。
高齢者は認知症以外にも、痛み、しびれ、歩行障害、排尿障害など他の症状を抱えていることも少なくありません。体の他の症状と認知症が相互に影響を与える可能性があり、包括的に診療を行っていく必要があります。当院脳神経外科では、歩行障害、排尿障害などを併発する正常圧水頭症診療を中心に行う老年外来や、痛み、しびれに対するしびれ外来、脳腫瘍外来、ボトックス外来など各種専門外来を取り揃えております。高齢者の認知症を取り巻く多様な問題に対して柔軟に対応してまいります。

脳神経外科診療部長 石井卓也