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平成17年度の事業概要 |
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平成17年度は、これまでの医療事故、研究費不正受給などを反省して、法令遵守の精神を育むこと、医療安全管理の徹底を図ること、財政基盤を確立することを基本的な理念として、学校法人慈恵大学の管理・運営、教育・研究、診療に関する以下の事業を行った。
夏季常任理事会(平成17年8月13日)において、寄附行為関連規則、学則の改定、今後の附属病院のあり方、経営の改善に向けた取り組みについて集中的に検討した。 |
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学校法人全体の管理・運営に関する事項 |
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- 1)寄附行為と寄附行為関連規則の改定
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- 私立学校法の改正に伴い寄附行為を改定した。新しい寄附行為は平成17年9月8日付けで文部科学省から認可された。
- 寄附行為改定に伴う寄附行為関連規則の制定・改定を理事会において継続検討し、教授会議および平成18年3月17日に開催された評議員会で意見を聞いた上で3月24日の理事会で決定した。
- 東京慈恵会医科大学学則の改定について教授会議で検討し、理事会の承認を得て文部科学省に手続きを行った。(平成18年2月)
- 2)法令遵守の精神の徹底
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- 慈恵大学行動憲章と行動規範を学内に周知徹底させた。
- 内部監査室が公的補助金の監査を定期的に実施し、不正行為の防止に努めた。
- 科学研究費補助金についての学内規程を整備し、科学研究費ハンドブックを作成し、教員に配布すると共に学内説明会を開催して規則遵守の徹底を図っている。
- 職場における法令や規程の違反行為ならびに倫理違反行為の早期発見によるコンプライアンス(法令遵守)の促進および被害者の保護を目的とし、教職員が安心して通報、相談することができる制度として、公益通報制度を平成17年11月から開始した。通報者および相談者を保護するため、相談窓口を大学と利害関係のない学外部署(弁護士事務所)とした。
- HSR(Hospital Social Responsibility)講演会の開催
企業の社会的責任が重視されているが、同様に病院の社会的責任も問われる。教職員がその意識を高めるために、一流企業(アフラック、資生堂、キャノンなど)から演者を招きHSRの講演会を開催した。
- 3)安定した医療収入の確保
- 病院経営を改善し大学の財政基盤を強化するため「学内横断的タスク・フォース」を設置した。平成17年10月から約6ヶ月間に渡り集中的に活動し、既に経費削減の成果を収めている。今後、これを拡大して教職員が一体となって経費削減の意識を高め、経営改善に資する。
- 4)外部評価システムの構築
- 第三者(学外有識者)による大学全体に関する評価と提言を受けることを計画し、引き続き人選中である。
- 5)人材育成システムの検討
- 教員評価の基本骨格を作成した。また、多様な評価に基づいて適切な教員人事を行うために、教育、研究、診療、社会的貢献に関するデータを集積する教員医師人事準備室を稼動させた。
- 6)大学広報部設置の検討
- 広報に関する部署を統一し、医療広報、マスコミ対応、PR推進など機能の充実を図ることにした。
- 7)大規模災害発生時における危機管理体制の構築
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- 区や市との連携を視野に入れた災害時における支援体制を構築した。
- 全学的な4機関災害危機管理検討会と共に、各機関に災害対策委員会を設置した。また、災害が発生したときに教職員が各機関にどれくらいの時間で到達できるか動員調査をした。
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教育・研究に関する計画 |
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- 1)卒前・卒後教育の改善
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- 卒前医学・看護教育の改善・充実を継続して検討した。医学科は8月にカリキュラム検討会を開催した。
- 文部科学省の平成17年度特色ある教育支援プログラムへ応募し、「多くの職種が参加する医療者教育」が採択された。
- 大学全体の医学教育、看護教育、卒前・卒後教育を支援するため10月1日付けで教育センターを設置した。センターは大学直属とし、医学教育研究室、看護教育研究室、教育開発室、卒後教育支援室の4部門で構成することにした。
- 研修指導医のための講習会を開催した。
- 2)入学試験の改善
- 医学科入学試験資料を分析・検討し、医学科入学試験を平成19年度から一本化することを決定した。
- 3)特色ある研究の推進
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- 大学院の系、授業科目、授業細目と研究科委員会出席教授を大幅に見直し、新たな大学院組織に改組した。
- 看護学科修士課程設置を継続的に検討すると共に、医療系大学院に関する調査研究を開始した。
- 研究奨励費の設置
学内若手研究者の研究を支援し、活性化を図るために研究奨励費を設け4500万円の予算を設定した。また、昨年までと同様に研究振興費を支給し研究の振興を図った。
- DNA医学研究所開設10年を記念してフォーラム「科学と人間」を開催した。大江健三郎氏が記念講演を行った。
- 4)看護専門学校の検討
- 看護専門学校のあり方について検討を進めた。看護専門学校志願者の減少、入学者の質の変化、看護大学と看護学科の増加、本学附属の看護師志願者の増加などを考慮して、看護専門学校のあり方を検討した。
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4. |
診療に関する計画 |
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- 1)医療安全管理の徹底
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- 昨年同様、病院長が決済できる医療安全管理予算を5000万円設定し、4附属病院に配分した。
- 医療安全週間(平成17年11月8日から3週間)を全学的に実施した。期間中に相互ラウンドを行った。
- 医療安全管理室の活動を強化した。
- 医療安全管理と倫理に関するワークショップ、リスクマネッジメントシンポジウムを開催し、医療安全管理に対する意識の向上を図った。また、鏡視下手術トレーニングコースを開催して、医療技術の向上を推進した。
- スキルスラボを西新橋校、国領校に設置して、医学生、看護学生、研修医、看護師の学習を支援した。
- 2)先進医療の推進
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- 高度先進医療技術の推進のため、該当する技術には経費を病院負担することにより臨床での実施をサポートしている。
- 平成17年度は、厚生労働省へ高度先進医療技術として承認申請を2件提出した。しかし、「臓器限局性前立腺癌に対する腹腔鏡下根治的前立腺摘除術」(申請科:泌尿器科)については、平成18年4月の診療報酬改定により保険収載されることとなった。
- 3)患者紹介の推進
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- 前年度に引き続き病診連携強化に取組み、患者数が回復傾向にある。
- 患者中心の医療をさらに積極的に推進することを目的とする患者支援・医療連携センターを平成18年4月に設立することを決定した。
- 4)患者サービスの推進
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- スマイルカウンターを設置し、患者さんに対する案内を改善した。
- 患者さん代表の声に耳を傾ける取り組みや診療に関するわかりやすい広報誌“すこやか”を発行して、医療情報の公開に努めた。
- 5)経費の合理的削減の推進
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- 合理的な経費削減を目指して、各部署で積極的に取り組んだ。特に、「学内横断的タスク・フォース」中で“病院経営の見える化TF”、“コストの手術TF”を編成し分析を行った。
- 6)青戸病院の再建と4附属病院の特色ある診療の検討
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- 青戸病院の再建と4附属病院の機能分化に関して、平成17年8月13 日の夏期常任理事会、10月6日の成医会総会パネルディスカッション、12月理事会で検討を重ね、青戸病院リニューアルのコンセプトと建築計画、本院外来棟の建築計画を決定した。
- 青戸病院は施設老朽化、卒前・卒後教育の教育病院としての必要性、地域住民からの要望、医師会や行政からの要請などと、医療経済を総合的に判断して病院の建築を決めた。また、引き続き本院外来棟の建築に着手することを決めた。また、青戸病院と本院との連携を強化することとした。
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