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作業療法部門 Department of Occupational Therapy(OT)の取り組み

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自動車運転再開支援の取り組み

OT取り組み

 脳卒中や脳外傷など道路交通法で定められる「一定の病気」に罹患された方は、自動車運転を再開するにあたって医療機関での適切な助言や公安委員会での臨時適性検査が必要となります。当院では脳に損傷を受けられた方で自動車運転の再開を希望される方に対して運転に必要な「認知・判断・予測」の評価や訓練を行っております。

自動車運転再開支援の流れ

OT取り組み

当院の自動車運転再開支援は院内運転能力評価と、実車評価に分かれます。
外来での通院で院内運転能力評価を実施される場合は外来通院に約1か月、実車評価に約1-2か月(予約状況による)、総合判定までに3か月間程度の期間を要します。
入院で院内運転能力評価を実施される場合は1週間の入院と、退院後の実車評価に1-2か月(予約状況による)、総合判定に2か月程度の期間を必要とします。なお、当院の運転再開支援は運転再開を約束するものではありません。評価の結果、運転再開を見送りと診断する場合もあります。

① リハビリテーション科医師の診察

医学的に症状は安定しているか、現病歴や合併症、画像検査をもとに診察します。また服薬管理や健康管理などの日常生活状況を聴取し、運転能力評価を開始できるかを確認します。
※ 認知症と診断されている方は法律上免許取消の対象となります。

② 院内運転能力評価(問診・神経心理学的検査・ドライビングシミュレーター評価)

OT取り組み

作業療法士、言語聴覚士により自動車運転を再開する目的や用途についての問診をします。次に自動車運転に必要な注意機能や記憶能力、視覚認知能力を机上検査で評価します。また、運転シミュレーター機器も配備しており、模擬運転場面での認知・判断・操作能力を院内で評価します。

③ 実車評価(連携する教習所・実車評価可能な専門機関)

実際の乗用車を用いた運転評価が必要な場合、当院の連携する指定自動車教習所、または実車評価可能な専門機関への連携を行います。(評価する施設で別途検査料金がかかります)

④ 運転再開可否の診断

院内運転能力評価、実車評価の結果をリハビリテーション科医により説明します。検査結果を総合的に判断し、当院での最終的な運転再開可否の診断を実施します。公安委員会に提出する診断書の作成も承ります。
※ 当院での再開可否の診断は、運転再開を保証するものではありません。時には免許返納を促す場合もございます。最終的な運転可否は公安委員会での判定となります。

就労支援への取り組み

勉強会風景勉強会風景

当院では、高次脳機能障害者への就労支援に特化した取り組みを実施しています。高次脳機能障害専門外来を有しており、高次脳機能障害者への神経心理学的検査に加え、職業能力評価として厚生労働省編 一般職業適性検査(GATB)、ワークサンプル幕張版(MWS)を実施しています。評価結果をもとに、必要に応じて訓練やその後のサポートとして外来通院をしていただく患者さんもいらっしゃいます。
また、外来での就労支援だけでなく、約2週間の短期入院による就労評価入院も実施し、柔軟な体制での支援を実施しています。

当院での職業能力評価内容

当院で職業能力評価として実施している代表的な2つの評価項目を以下にご紹介します。

●厚生労働省編 一般職業適性検査(GATB)

本検査は、様々な職業の領域で仕事をする際に必要となる代表的な9種類の適性能力を測定することで、患者さん自身の特性の理解や、適性職業領域の探索等、望ましい職業選択を行うための情報を評価・提供することを目的として作成されたものです。

●ワークサンプル幕張版(MWS)

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センターによって開発された、OA作業、事務作業、実務作業の3項目に大別され、全13種類に構成された職業リハビリテーションのツールです。簡易版(作業能力の初期評価として用いています)と訓練版に分かれており、作業の疑似体験や職業上の課題を把握する評価ツールとして用いています。また、作業遂行力の向上や障害の補完方法の活用に向けた支援ツールとして使用しています。

作業療法士の関わり

作業療法士は、上記のような評価を通して患者さんの障害特性と職業上の利点、課題を整理し、就労を行う際の配慮事項も含め包括的な支援が提供できるように関わっております。当院にいらっしゃる方には、

  • ・就職をしたいがどのような職業が自分に合っているかわからない
  • ・就職、復職することができたが、ミスが多い、仕事が遅いと注意されることが多く悩んでいる
  • ・現在、休職中でこれから復職することができるか不安
  • ・就労継続支援A型事業所、B型事業所など、どこの施設を利用したらよいかわからない
  • ・仕事をしたいと思うが、どうしたらよいかわからない
っといった様々な悩みをお持ちの方がいらっしゃいます。
先ずは、そのような患者さんの仕事に対する意向や希望する働き方、生活の状況、職業準備性が整っているかなど多角的な視点でお話しを伺った上で、必要に応じた支援を提供させていただいています。

手の外科疾患に対するハンドセラピー

当院は肘・手関節や手指の整形外科疾患を対象に、外傷によって損傷された手の機能回復を目指すとともに「生活する手(Useful hand)」としての能力を獲得することを目的に手の外科のリハビリテーション(ハンドセラピー)を提供しています。当院では手外科専門医の指示のもと、密に連携をとりながらリハビリテーションを行っています。

□ 評価

・知覚、関節可動域、筋力などを評価します。

OT取り組みOT取り組み

□ リハビリテーション

・屈筋腱・伸筋腱損傷の早期運動療法、骨折後の関節可動域訓練、知覚再教育、物理療法などの治療を個々の疾患や症状に応じて実施しています。

OT取り組みOT取り組み

□ 自主トレーニング指導

・自宅でも自己で訓練ができるように自主トレーニング用紙をお渡しして指導しています。

OT取り組みOT取り組み

□ スプリント作成

・術後の患部の安静固定や早期運動を目的とし、医師の指示のもと作業療法士が患者さんの手に合わせてスプリント(装具)を作製し、効果的な治療を提供しています。

OT取り組みOT取り組み

□ 慈恵4病院及び関連施設との勉強会の開催

・慈恵4病院の作業療法士と関連病院の作業療法士が手外科センターの医師と共同して症例検討やトピックスの共有を図っています。

森田療法への取り組み

OT取り組み

森田療法は、本学精神医学講座初代教授・森田正馬により1919年に創始された神経症性障害に対する精神療法です。当院は森田療法専門の入院病棟を有しており、集団生活を軸に不安を抱えながらも行動をすることを目標に治療を行っています。近年では感情障害へも適応を拡大してきております。リハビリテーション科では、2016年より作業療法士が入院森田療法へ参加(週4日/半日)しています。
※ 2023年3月現在、COVID-19の影響から入院森田療法が休診となっているため実施しておりません。

森田療法の流れ

OT取り組み

当院の入院森田療法では、基本は4つのステップを順に進んでいきます。
最初は 臥褥期 といい、洗面やトイレ以外には何もせず、心身の疲れをとり、これまで苦しめられ、避けようとしてきた不安や恐怖と、とことん向き合う時期になります。次の 軽作業期 では、日中は他の患者さんといっしょに作業スペースで過ごしますが、原則としてひとりで作業を行います。疲労するような作業や雑談は避け、臥褥期を経て変化した体調や生活リズムを整え、本格的な作業期に向けた、準備をする期間になります。次が 作業期 といい、他の患者さんと協力して、病棟内の清掃や、動物の飼育、植物の手入れなどを行います。患者さん同士で話し合うなど、自主的な行動に移っていきます。先輩患者さんが後輩患者さんに指導をするなど、自主性もつける時期です。最後のステップは 社会復帰に向けた準備の時期 です。職場、学校、家庭などに戻っていくため、生活設計を考えたり、復帰のための外出や外泊を行います。一人ひとりの事情に合わせて考えられます。
作業療法士は、作業期からともに活動し、『作業の取り組み方』や『対人交流などの評価・介入』を実施しています。
参考資料:こころのクスリBOOKS よくわかる森田療法 心の自然治癒力を高める,監修 中村敬,主婦の友社,2018.

東京慈恵会医科大学 森田療法センターホームページ; https://morita-jikei.jp/

作業療法士の関わり

作業療法士は作業期から活動し、参与観察からワークパーソナリティーを見ています。具体的には『対人適応能力』『作業の行い方』『作業への取り組み方』『活動の持続性や安定性』などを見ております。評価をもとに、症状に捉われず、行動へと踏み出せるように作業活動を通して関わっています。軽作業期から作業期、作業期から社会復帰期など、各期への移行が難しい場合には、個別で作業療法士が対応する場合もございます。軽作業期から作業期への移行が難しい場合には、アクティビティを用いて2人作業を行い、対人交流を促し、作業期から社会復帰期への移行が難しい場合には、退院後の就労などを見据えて職能評価(厚生労働省編 一般職業適性検査;GATBワークサンプル幕張版;MWS)を実施する例もあります。個人の特性を評価しながら、退院後の生活を視野に入れた支援を行っています。