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小児科 アレルギー診療:アトピー性皮膚炎

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アトピー性皮膚炎の治療のキホン

イラストアトピー性皮膚炎は、痒みのある湿疹が慢性的(乳児2ヶ月以上、年長児は6ヶ月以上)に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。痒みのある湿疹は左右対称に現れるのもアトピー性皮膚炎の特徴であり、年齢によっても湿疹が現れる部位は変わります。
そして治療は①スキンケア②薬物療法③悪化因子の除去が基本になります。

①スキンケア

アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能(注:皮膚内の水分の蒸散を防ぎ、外からの異物の侵入から守る役割を担っています)が低下しているため、外部の刺激が簡単に皮膚の中に入ってきてしまいます。したがって皮膚のバリア機能を正常に戻してあげることが大切になります。皮膚をしっかり洗って皮膚についたアレルゲン、汚れ、汗などの刺激物を取り除き、適切な保湿剤を塗布することにより、きれいな皮膚を維持しやすくします。

・スキンケアってどうやればよいの? (参照)

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②薬物療法

一般的によく使われるステロイド外用薬は、湿疹・かゆみを引き起こす原因である皮膚の炎症を抑えるのに効果的です。通常こどもは大人に使用するよりも弱いステロイド外用薬を使用しますが、弱すぎても効果がないため、皮膚の状態にあった適切な薬を使用することが大切です。

・アトピー性皮膚炎、その軟膏の使い方、本当に合っていますか? (参照)

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③悪化因子の除去

アトピー性皮膚炎を悪化させる因子として、ダニ、ハウスダスト、カビ、ペットなどに由来する抗原が挙げられます。ダニの多い場所はまくら、布団、じゅうたん、布製ソファー、クッション、ぬいぐるみ、カーテンなどです。洗濯できるものはこまめにし、毎日の掃除など日常生活の環境整備が非常に大切です。

スキンケアってどうやればよいの?

私たちが考える正しいスキンケアについて説明いたします。
スキンケアとは大きく、①保湿剤外用、②皮膚洗浄(入浴・シャワー)に分けて考えることができます。

1. 保湿剤外用

イラストまず保湿剤外用について説明します。
アトピー性皮膚炎患者さんの皮膚は、乾燥皮膚、すなわち
ドライスキンになりやすいという特徴があります。これを
そのままにしておくと皮膚のかゆみが生じやすくなると
ともに、アレルゲンの影響を受けやすくなります。保湿剤の外用により、皮膚角質層の水分含有量を増やすことができ、結果としてかゆみを防ぎ、アトピー性皮膚炎の再燃を予防することができます。保湿剤には、いろいろな特徴や種類がありますので、年齢、季節、部位に応じ、主治医の先生とよく相談して用いましょう。

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回数は1日2回以上塗るようにしましょう。入浴後には必ず塗りましょう。一般には「入浴直後」のタイミングが推奨されますが、ライフスタイルに合わせて無理せず継続しましょう。

量的には、チューブから人差し指の先(先端から第1関節までの約2cm程度)相当に押し出した量(専門用語で1 finger-tip unitと呼びます)を、大人の手のひら2つ分の面積に塗ります。湿疹のあった部位に留まらず、広く塗ることが推奨されています。とにかくたっぷり塗りましょう。

・アトピー性皮膚炎、その軟膏の使い方、本当に合っていますか? (参照)

2. 皮膚洗浄

次に、入浴・シャワー浴について説明します。
ネット等で様々な方法が公開されていますが、要は、皮膚の汚れや細菌を十分に洗浄すればよいのです。イメージとして、アトピー性皮膚炎の皮膚には、アレルゲンや細菌がたくさんこびりついていると想像してみてください。あまり難しく考えないで、とにかくそれらを十分に洗い流しましょう。

イラストイラスト赤ちゃんの首や脇などは、皮膚が折れて重なっている
ので、折れ重なった部分を伸ばして洗うことも必要に
なります。
一般に「ジュクジュク」した部分はしっかりと洗います。
一方で「乾燥」した部分は軽めに洗います。どちら
にしてもゴシゴシこする必要はありません。

どのような石鹸や洗浄液を用いればよいか、という事に関しては明確な医学的根拠はありません。お母さんやお父さんがお使いになって、良いとお感じのものであれば問題ないと思います。

お子さんが思春期に差しかかると、親との入浴を避け始めます。お子さん一人ではなかなか十分な皮膚洗浄が難しくなります。しかしこの時、あまりやかましく注意すると健全な親子関係を歪めてしまうことがあります。主治医の先生に相談して、ゆっくりじっくり対応しましょう。

アトピー性皮膚炎、その軟膏の使い方、本当に合っていますか?

(アトピー性皮膚炎の治療については「アトピー性皮膚炎の治療のキホン」をご参照下さい。)
ここでは薬物療法について詳しく解説していきます。

イラストまず湿疹がある皮膚では毎日ステロイド外用薬をしっかり
塗布し、皮膚を完全にツルツルの状態にします。塗布し
始めるとすぐに皮膚はキレイになりますが、それは表面の
炎症が治まっただけであり、皮膚の深部にはまだ炎症が
残っている状態です。そこで薬を中止してしまうとほとんど再発してしまいますので減量のタイミングは担当医師と相談する必要があります。

塗り方としては、薬を塗る人の手をキレイに洗い、たっぷりと皮膚にのせるように塗布します。薬を薄くのばしたり、強く擦り込んだりしてしまうと肝心な湿疹部位に薬が到達せずに、治療効果が半減してしまいます。また頭皮では地肌に到達するように塗布します。イラスト薬をふりかけるだけだと髪の毛が薬を吸い取ってしまい、湿疹のある地肌に薬が到達しません。髪を分けて地肌を出し、垂らした薬を指でおさえるようにしてのばします。

薬の量の目安としては

  全身に湿疹がある場合
1回に塗る薬の量の目安
大人両手のひら分の面積に塗る量の目安
乳児 小さじ すり切り1杯 (約4 g)

●チューブの場合

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=人差し指先端から第一関節まで(約0.5 g)

●ローションの場合

イラスト

=1円玉大(約0.5 g)

幼児 3-5歳 小さじ すり切り1.5杯 (約6 g)
小児 10歳 小さじ すり切り2杯 (約8-10 g)
中学生 小さじ すり切り3杯 (約12-15 g)

皮膚がしっとりする程度、ティッシュペーパーが貼り付く程度、皮膚の溝を埋めるイメージで、たっぷり塗りましょう。いっけんただの乾燥した皮膚に見えても、触ったときにザラザラ、ブツブツしている部位には皮膚の炎症があることも意識しましょう。肌がツルツルになった場合には薬の量が減っていきますが、この塗布の仕方は保湿剤を塗布するときも同じです。

<参考文献>
・ぜん息悪化予防のための小児アトピー性皮膚炎ハンドブック.環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/archives_1028.html
・佐伯 秀久, 大矢 幸弘, 古田 淳一 監修. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018. 日皮会誌 2018.

アトピー性皮膚炎の入院治療(教育入院)

※費用:保険診療内です

アトピー性皮膚炎の基本治療は①薬物療法(ステロイド外用薬など)②スキンケア③悪化要因の検索と対策です。適切な治療を行うことでアトピー性皮膚炎は良くなります。

スキンケアや外用薬の塗り方などは、説明だけでなく実際に見てやってみることが最も大切と考えますが、残念ながら実際の外来ではそのような時間はほとんどありません。
そこで私たちは、スキンケアや薬の塗り方について練習するため、お子さんの症状によっては入院治療(1〜2週間)も取り入れています。入院中には、正しいからだの洗い方、スキンケア方法や薬の塗り方について具体的な説明を受け、繰り返し実践します。また、退院後も無理なく有効な治療を継続できるように、お子さんの生活環境や生活リズムにあわせた悪化要因の対策や治療の実践を相談しています。

入院時から退院時への症状変化

・・・デメリット・・・
入院治療のため、面会・付き添いの制限がございます。新型コロナウイルスの感染状況によって制限の内容に変更がでる場合がございます。面会・付き添いに関しましては、入院時に詳細をご説明いたします。

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アトピーに悩む親御さんに寄り添うアレルギー診療

アトピー性皮膚炎の多くは、乳幼児期に発症しますが、赤ちゃん全体の10%くらいがかかっていると言われています。
小さなお子さんがかゆみで眠れなかったり、我慢できなくてかきむしって皮膚に傷がついたり、軟膏を塗るのを嫌がったり暴れたりと、お母さん・お父さんの悩みはつきないと思います。
かゆみとたたかうお子さんも大きなストレスにさらされていますが、それをケアする親御さんも非常にストレスを感じています。
当院小児科部長の勝沼らが、アトピー性皮膚炎のお子さんをケアする養育者のQOL(生活の質 Quality of life)質問票を開発し、調査をしています。その結果、養育者のQOLは次の4つの要素からなることが分かりました。

  要素 具体例
1. 疲労症状 「お子さんのアトピー性皮膚炎のことで疲れを感じる」など
2. アトピー性皮膚炎に関する心配 「お子さんのアトピー性皮膚炎が気がかり」など
3. 家族の協力 「家族が子どものケアに協力してくれる」など
4. 達成感 「お子さんの養育を通して人間的に成長した」など

この質問票(全19問)で、アトピー性皮膚炎患者さんのご家族にアンケートを行いました(実際のアンケートの文章は省略します)。
その結果、患児の湿疹の程度が強く、範囲がひろいほど、養育者のQOLは低下していました。つまり、湿疹がひどいほど、養育者は疲労を感じ、心配が強くなっているという結果でした。さらに、治療開始後2回目の受診時に、同じ内容のアンケートで調査しました。すると、お子さんのアトピー性皮膚炎が改善すれば、養育者の疲労感が減り、心配も減っていました。つまりお子さんのアトピー性皮膚炎が良くなれば、お子さんが楽になるばかりでなく、周囲のご家族も楽になれるのです。

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アトピー性皮膚炎について正しい知識を知り、しっかりスキンケアを行うことで、アトピー性皮膚炎は改善し、コントロールできます。スキンケアを継続するのは大変ですが、皮膚の状態にあった軟膏やクリームを選び、しっかり塗ることで、必ず改善していきます。スキンケアを嫌がるお子さんもいると思いますが、スキンケアの工夫なども一緒に考えていきましょう。また、皮膚がきれいになった後に湿疹が出ると不安になると思いますが、定期的にみせていただくことで対処がわかるようになってきますので、ぜひご相談ください。

アトピー性皮膚炎の最新治療

平成の時代まで、子どものアトピー性皮膚炎治療に使える薬はステロイド外用剤(リンデロン®、アルメタ®、ロコイド®、キンダーベート®など)とタクロリムス外用剤(プロトピック®など)、そして保湿剤に限られていました。飲み薬として、抗ヒスタミン薬が使われることもありましたが効果は限定的でした。
しかし2018年からアトピー性皮膚炎治療は大きく変化してきました。
一つは生物学的製剤の登場です。生物学的製剤とは化学的に合成した薬剤でなく、原因分子を標的とした抗体を人工的に生体に作らせ、薬剤として使用するものです。現在は16歳以上が適応ですが、効果には目覚しいものがあります。ただし注射剤であることが子どもには問題かもしれません。副作用として結膜炎が問題となることがあります。
イラスト 2021年には、JAK阻害薬の外用剤(2歳以上)と内服薬(12歳
以上)が小児で使えるようになりました。アトピー性皮膚炎では
炎症性サイトカインという物質が炎症細胞を刺激しています。
この時、細胞の中ではJAK(Janus kinase(ヤヌスキナーゼ)の略称、「ジャック」と発音します)という酵素が重要な役割を
担っていますが、JAK阻害薬はこのJAKを抑えることにより、
アトピー性皮膚炎の症状を良くします。生物学的製剤に負けない効果が期待されています。副作用として他のウィルスや細菌に
かかりやすくなることがあるため注意が必要です。

  一般名 商品名 対象年齢 用法
ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体 デュピルマブ デュピクセント® 2018年〜15歳以上 注射薬 2週毎
JAK阻害薬 デルゴシチニブ コレクチム軟膏® 2020年〜2歳以上 外用薬
JAK阻害薬 バリシチニブ オルミエント® 2020年〜15歳以上 内服薬 毎日
JAK阻害薬 ウパダシチニブ リンヴォック® 2021年〜12歳以上 内服薬 毎日
JAK阻害薬 アブロシチニブ サイバインコ® 2021年〜12歳以上 内服薬 毎日
PDE4阻害薬 ジミファミラスト モイゼルト軟膏® 2021年〜2歳以上 外用薬

※ジミファミラスト(モイゼルト軟膏)発売延期中です。(2022年2月28日時点)

このように令和の時代となり、アトピー性皮膚炎治療は大きな変貌を遂げつつあります。ここにご紹介した薬剤以外にも有力な新薬が次々と開発されています。今現在、アトピー性皮膚炎でお悩みの患者さん、ご家族には大いに期待して頂きたいと思います。イラスト